東京地方裁判所 昭和39年(ヨ)5472号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔争点〕債権者は本件地区(宮城県玉造郡鳴子町大字塊首荒雄岳国有林九〇四〇アール)内の通称鬼首白土と呼ばれる岩石を、大正一四年頃から所管庁の青森営森局からの払下げ形式によつて採堀し、油脂性研磨材の原料として来たが、昭和三二年九月二四日債務者両名が右地区に硫黄、硫化鉄鉱、けい石、耐火粘土の鉱業権設定を受け、本件白土をけい石と称してその採堀をはじめた。そこで債権者は、鉱業法上の法定鉱物であるけい石とは自然状態において硅酸分九〇パーセント以上を含むものをいうが、本件白土は自然状態では硅酸分五三パーセント、水分約四四パーセントであつて、けい石ではないと主張し、その採堀禁止の仮処分申請をした。
判決は、本件白土が法定鉱物たるけい石にあたらないとする疏明が十分でなく、従つて債務者が本件白土について鉱業権を有しないことの疏明が不十分であると判断して、債権者の仮処分申請を却下した。その説くところは次のとおり。
〔判決理由〕本件白土の法定鉱物該当性に関する当事者間の争点は、実質的には、本件白土が自然状態、すなわち粗鉱品位においてけい酸分九〇パーセント以上を含むものか否かに帰着するものである。なぜならば、(一)省略、(二)けい石については、昭和三一年五月七日に昭和三一鉱第二〇二号をもつて通商産業省鉱山局長名で『鉱業法第三条のけい石の定義について』なる通牒が発せられており、これによると火成作用による場合はけい酸分九〇パーセント以上の場合に法定鉱物であるけい石にあたるものとされており、本件白土が右区分にあたるものであることは当事者の明らかに争わないところであるし、成立に争ない甲第二号証の三などによつて認められる、(三)右通牒は『けい酸分の基準品位は、自然状態、すなわち粗鉱品位を対象とするもので、鉱区のうち稼行の対象となるべき鉱床の全体品位を指すものであつて採取試料は鉱床全体の平均品位をできるだけ完全に代表するものであることが望ましい』と述べている、(四)本件白土が主としてけい酸および水分によりなることは、この点に関する疏明資料のすべて一致するところである。(5)債権者は、けい石は硝子セメントなどの材料となるもので、本件白土とは異るというが、本件白土が非晶質の物を主体とするという事実は、鉱業法上の定義がけい酸分の量により決められる事実を否定するものではなく、本件においてはもつぱら鉱業法上の定義によるものであるから、その主張を採れない、からである。ところで、債権者は右認定基準の『自然状態』について採堀した時点における状態と解するようであるけれども、右にいう自然状態とは精選、化学的処理などをほどこさない状態を言うものと思われる。けだし、産出地が水中湿地である場合と乾燥地である場合とでは産出した瞬間における水分の割合に大差が生じることは常識上明らかであるが、これが認定基準を左右すべき合理的根拠ではないからであり、一方化学的処理、高温処理などをほどこせば往々にして鉱物の性質を変更することになる(高温処理によれば結晶水などが除去され結晶を破壊することもあるのは常識である)からである。当裁判所は自然乾燥状態は右にいう自然状態に含まれうると考える。そこで本件白土のけい酸含有量について判断するのに、本件白土のけい酸含有量が九〇パーセントに達せず、したがつてけい石にあたらないとする疏明は充分でないと思われる。その理由は次のとおりである。(一)甲第一四号証によれば、本件白土は約二週間の自然乾燥によりけい酸分九〇パーセントを超えるものもあり、常温乾燥によつて試料の半ばは右基準を超えていること。なお右資料によると乾燥により付着水が除去されて恒常に達するのに長時間を要することが判明するが、これは本件白土がコロイド状けい酸、けい酸ゲルをなしているためと推察できる。もつともこの場合に恒状に達した場合を基準とすべきか否かについては充分な賃料がない。(二)成立に争ない甲第一七号証の二によれば、仙台通商産業局においてはけい酸分九〇パーセント以上と認定している。ただし裏付けとなる資料に欠けている。(三)右のような賃料によつては、本件白土がけい石に明らかに該当するとの判断はできないけれども、また一方けい石に該当しないとの判断もできない。債権者の主張について疏明は充分でないといわざるを得ない。(花田政道)